「君だけは他の誰にも渡したくない」by blapy


時間は夕暮れ

日も落ちきる直前の真っ赤な空

学校の帰り道

裏山のわきを抜ける小道

右には山があり左の崖の下は海

車もあまり通らない通学路

お気に入りの幼馴染といつもの下校中

いつもと違ったのはゆるいカーブを描いて

海に突き出すこの道の先

そこに立ち止まってこちらをみてるような

俺よりすこし大きな人影があった

こちらからは逆光になってて顔が確かめられない

少しづつ近づくにつれて

その影の主のシルエットがはっきりしてきた

隣のクラスのボス格

なんだか少しいやな予感がする

けどもう帰り道はここを通らなければいけないし

遠回りするには気づくのが遅すぎた

縮まる距離が二人の緊張感を煽りたてる

そして奴の影が

俺の足にとどいたとき







「よぉ」







18才にしてはやや野太い声







「おぅ」「こんにちわ」







二人とも緊張した声で答えた







「おまえさ、ちょっと先に帰っててくれない?

俺、Aちゃんに少し用があんだけど」







奴が俺に向かって言った

どうやら俺は邪魔らしい

なんでこんなやつに

のけものにされなければいけないのか?

なんだかものすごく腹立たしい







「なんでさ?俺がいちゃいけないのか?

それともあれか?告白ってやつか?あー?」







俺は奴の頼みに従うのはいやだった







「なんだと?うるせーからとっとと帰れってんだろ!」







顔を真っ赤にしている

照れてるのか、怒りなのか

夕日のせいかはわからないが

真っ赤な顔で怒鳴ってきた







「あー、そうか!やっぱりアレか!

そーかそーか、ふーん・・・

なるほどねー、じゃー見てるわ!」







思わず思ったことを口にしてしまった

ますます真っ赤になってゆく顔を見ながら

問い詰めてみる

どうも赤い顔は夕日やテレが原因ではないらしい







「うるせー!早く帰れってんだろ!!」







奴が怒りに任せて腕を振り上げた

その時、ちょうどそれまで

奴の後ろにあった夕日が

俺の顔に直射した

まぶしくて前が見えない



(がつっ!)



次の瞬間、額の眉間に強烈なパンチが炸裂した

後ろ向きに数メートル飛んだ俺は

夕日の残光とパンチの衝撃で目の前がはっきりしない

ひじで上半身をやっと起こしたところに

誰か走ってきた

構えようにもひじで上半身をささえているのだ

手がでない!!



(まずった!)



しかし

走ってきた影は俺の横に座り込んだ

ぼやけた視界に黒いストレートの髪が映る







「ねえ!!大丈夫!?

立てる?ねえ!!

大丈夫?!」







聞きなれた幼馴染の声だった

激しく揺すられた三半規管は俺からバランスを奪う

思わず左手が幼馴染の肩を掴んだ

でもふらつく俺に幼馴染は手を貸してくれた

背中からやわらかい手の感触が伝わってくる

もう一度気を入れなおしてその場に踏みとどまる

幼馴染の肩に顔を近づけてつぶやく







「君だけは他の誰にも渡したくない」





驚く幼馴染を尻目に奴に向かって走りこんだ

俺は拳を握った

振りあげた腕を思い切り振り下ろす

奴に向かって・・・。